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東京地方裁判所 昭和31年(ワ)6427号 判決

原告 大竹五喜男

右代理人弁護士 小林多助

被告 三信興業株式会社

右代表者 長谷一郎

右代理人弁護士 堀之内誠吉

主文

一、被告会社の昭和二八年八月一日付株主総会における別紙第一及び第二の各決議は各無効であることを確認する。

一、原告その余の請求を却下する。

一、訴訟費用はこれを二分し、その各々を原告及び被告の各負担とする。

事実

≪省略≫

理由

原告の主張事実を被告はすべて争わない。そこで、右事実によれば、先ず被告会社株主総会昭和二八年八月一日の決議(定款二条及び二一条変更の各決議)の無効確認を求める原告の請求は理由があるから、これを認容する。

次に、被告会社株主総会の昭和二九年一〇月一〇日の決議(役員選任の決議)の無効確認を求める原告の請求については、先ず果して右請求が法律上の利益を有するや否やを考えるに、原告が右無効確認を求める株主総会の決議により取締役に選任せられ(且つ同日の取締役会の決議で代表取締役に選任せられ)た中村繁子及び高橋繁雄は、その後昭和三一年六月二四日いずれも取締役(兼代表取締役)を辞任して、同日右選任の登記は抹消され、しかも即日後任者が選任せられてその旨の登記が為されていることは当事者間に争がない。してみれば、現在、右両名は、最早取締役でないのみならず、商法二五八条一項による一時的な取締役としての権利義務すら有していないのであるから、右両名が取締役に選任せられたときの株主総会決議の無効確認を求める原告の請求はその法律上の利益を欠くものといわなければならない。しかるに、原告は、現在においても、右両名が取締役兼代表取締役として登記されていた間同会社の代表者として為した各種法律行為の効力を争うために、その前提として右両名の取締役選任決議の無効を確認する判決を得る必要があり、これが本訴における法律上の利益を成すものであると主張するが、そもそも株主総会の決議が存在しないことを理由にその無効の確認を求める訴訟(実務上しばしば決議不存在確認とよばれる訴訟)は、その勝訴の判決が確定することによつてのみ決議の失効の効果が形成されるいわゆる形成訴訟とは解し難いから、その決議の無効なること、したがつてこれを本件についていえば、上記両名が取締役に選任せられた株主総会の決議が無効であるということは、あえてその旨の確定判決を俟つまでもなく、他の訴訟における攻撃防禦の方法としても主張し得るところと解せられるので、原告の右主張は結局採用し難い。そこで、この部分に関する原告の訴は不適法なものとしてこれを却下し、訴訟費用の負担につき民訴八九条、九二条本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 菅野啓蔵 裁判官 宍戸清七 小谷卓男)

〈以下省略〉

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